下園先生の提唱する3:7のバランス
下園先生がうつ改善において強調する指針に「3:7のバランス」があります。
これはまず、努力で克服できる範囲を「3」、自分の努力ではコントロール出来ない範囲を「7」の割合とする考え方です。
自分の頑張りや努力によって「10の改善」という事を目指してしまうと、そこには必然的に無理や焦りが生じ、逆にうつ克服への道が遠のいてしまうのです。
うつ病になりやすい人の特徴のひとつとして「完璧主義」「白黒思考」などが挙げられますが、これらの考え方ははほぼ「10対1」の思考というものです。
仮にうつが底期にあり、「全く回復していない自分の割合が10、回復した自分が0」の状態だとすれば、そこから頑張って 逆転し一気に0対10の回復を目指すのではなく、ますは7対3 そこから徐々に3対7まで持っていくような気持ちで取り組むことが結果的にうつ回復への確実な道のりだと言うことです。
認知療法においても、いきなり10の変化を目指すとその変化が早過ぎたり、過去の自分の思考を完全否定するという事になり、この強引な変化によってその後に揺り戻しやリバウンドが起こり、結果的に回復から遠ざかってしまう事になる危険があるということです。
まず職場復帰までには30%の改善を目標にし、最終的には70%という考え方でトレーニングを進めていきます。
辛い状態から早く抜け出したいという気持ちは誰にでもあるものですが、うつからの完全脱出にはある程度の時間がかかるもので、焦りは逆効果になってしまいます。
そのため、下園先生はたとえ多少の時間がかかっても、ゆっくりと徐々にうつへの回復に向けてのトレーニングをするべきだとしています。
人間には現状維持機能(ホメオタシス)があり急激な変化を嫌います。
急激な変化にはすぐにリバウンドが起こり、焦って無理に早めに仕事などに復帰したために、その後何度もリバウンドを繰り返す悪循環に陥り、結果的に非常に長い期間度々襲い来るうつの波に苦しめられてしまうことになるのです。
確実な魔法は存在しないということを認識し、忍耐強く、無理に過去の自分も捨てず、徐々に状態を変化させていく事が、うつ完全脱出への確実な道のりになるのです。